九州大学ワンダーフォーゲル部【活動レポート】   

2010年夏合宿 中央アルプス

2010年9月3日~8日 山中3泊4日
参加者:5名(3年1名、2年2名、1年2名)
文:匿名希望

行程:コガラ登山口→七合目小屋(泊)→木曽駒ヶ岳→千畳敷→檜尾岳→檜尾避難小屋(泊) →空木岳→空木岳避難小屋(泊)→駒ヶ根高原

9月4日 山行1日目

=行程=
7:19 コガラ登山口
8:06 林道終点
9:00 力水
11:43 七合目避難小屋

●登山口から七合目小屋へ


スキー場の中の登山口。

スキー場の建物の先でタクシーを降りた。すでに標高が1250mほどあり、涼しい。天気はよい。 準備をして歩き始めた。この合宿では、リーダーの私以外の4人が1日交代で先頭を歩くことにしている。 安全確保のため、私は2番目に歩くことにした。今日の先頭は1年生。広い谷の中の傾斜の緩やかな未舗装林道を進んだ。 林道の周りには九州では見たことのない木が生えている。人工林なのか天然林なのか分からない。 林道の終点から幸ノ川を渡渉し、急な登りとなった。樹林帯の中の道を休みながらゆっくり登っていった。 4合目半の1910m地点に力水と呼ばれる水場があり、ここで水を汲んだ。少し汲みにくかったが、容器を満たすことができた。 尾根沿いの道をさらに登っていった。展望はよくないが、森は美しい。

●快適な小屋

昼前に七合目の避難小屋に着いた。今回はすべて無人の山小屋に泊まる予定で、テントなどは持ってきていない。 小屋のそばのベンチでお昼にした。食パンと魚肉ソーセージとジャム。ワンゲルの昼食の定番であるが、 久しぶりに食べた気がした。昼食後は小屋の前にある岩のピークに登るなどして過ごした。このピークからは展望がよい。 御嶽山や乗鞍岳が見えた。


小屋の前の展望のよい岩から乗鞍岳方面を望む。

小屋はとてもきれいで快適そのものであった。炊事場と寝室に分かれていて、寝室部分は2階建てでマットが敷いてあった。 小屋の外のトイレは水洗で非常にきれい。太陽光と風力で発電した電力を使って浄化槽で処理していると書いてあった。 電力と水が得られれば、こんな山の中でも水洗トイレを作れるのかと感心した。水はトイレの裏の蛇口の水を使った。 しばらく小屋の周辺でのんびりと過ごし、夕食の時間が近づいてきたが、おなかがすかない。 お昼を正午ごろ食べたのは失敗であった。おなかはすいていなかったが、あまり夕食が遅くなるのもよくないので、 カレーを作って食べた。小屋は貸し切りで、気兼ねなくのんびりと過ごすことができた。夕食後はウノをした。


9月5日 山行2日目

=行程=
5:35 七合目避難小屋
6:25 水場
8:02 玉の窪山荘
8:35 頂上木曽小屋
8:42 木曽駒ヶ岳
9:29 中岳
9:49 宝剣山荘
10:20 宝剣岳
10:46 宝剣山荘
11:21 千畳敷駅・ホテル千畳敷
12:14 極楽平
12:26 島田娘
13:35 濁沢大峰
--:-- 檜尾岳
--:-- 檜尾避難小屋

●中央アルプス最高峰・駒ヶ岳の山頂へ

朝、メンバーのうち1人がみんなより30分早く起きて、ご飯を炊いた。ほかの人は4時過ぎに起きて朝食をとり準備をしたが、 出発は5時半になってしまった。少しゆっくり寝られたが、出発が予定より30分ほど遅れてしまい、この作戦は失敗であった。 小屋を出て、山腹をトラバースする道を進んだ。途中、山姥と呼ばれる巨石がたくさんある場所を通ったが、 期待したほどではなかった。8合目の水場で水を汲んだ。ここから小屋に水が引いてあるようだ。しばらく進むと、 樹林帯を抜け、展望がよくなった。玉ノ窪カールのガレた斜面を登り、玉ノ窪山荘に着いた。ここからは見晴らしのよい尾根道である。 気持ちがよい。頂上木曽小屋の横を通り、駒ヶ岳山頂に着いた。中央アルプスの最高峰である。標高2956m。展望は良好。 記念撮影をし、中岳方面に向かった。ここから千畳敷にかけては非常に人が多かった。


木曽駒ヶ岳山頂。

●後悔とピリピリ

中岳を越え、宝剣山荘に着いた。山荘の中に荷物を置かせてもらい、宝剣岳に向かった。岩場が続き、気が抜けない。朝は天気がよかったが、 次第に入道雲がわき始め、稜線にガスがかかり始めた。山頂に着き携帯電話で確認すると、雷注意報が発表されていた。 これはまずいと思い、ピリピリし始める。朝出発が遅かったことと宝剣岳をピストンしたことを悔やんだ。 午後からにわか雨が予想されるときは、できるだけ朝早く出発しなければならないと改めて思った。 宝剣山荘から千畳敷にかけても人が多かった。日曜で天気もまあまあよいからであろう。千畳敷への下りの道はよく整備されていた。 千畳敷のお花畑の中を通り、ロープウェイの駅の前で休憩した。ソフトクリームを買って食べるメンバーもいた。 ここから極楽平への登りはみんなきつそうだった。急な登りを終え、極楽平からガスのかかる稜線を檜尾避難小屋目指して縦走した。 携帯電話で時々気象レーダーを確認し、雷雨にならないことを祈り、檜尾岳への道を急いだ。私たちの前には単独行の男性が歩いており、 時折立ち止まって地図を広げている。ちょっと心配な様子だったので、追い抜かしたときに行き先を聞いてみると、 今日中に檜尾岳から檜尾橋に下山するとつもりだという。地図のコースタイム通りだと、下山が7時過ぎになってしまうことを告げ、 千畳敷に引き返すように勧めると、今下ったばかりの斜面を登り、引き返していった。もう少し早く声をかけてあげればよかった。 私は早く歩いて雷雨になるまでに着かないと思っているので、いくら歩いても疲れなかった。私は休憩なしでも行けそうである。 何とか雨に打たれることなく檜尾避難小屋に着いた。ほっとした。


檜尾岳付近のお花畑。正面奥に小さく見えるのが檜尾避難小屋。

●水汲みのジレンマ

山小屋には先客の夫婦がいた。この小屋もきれいで快適でそうである。ただ、水場が5分ほど下ったところにあり、水が細いとのことだった。 水汲みにはじゃんけんで負けた2年生2人が行った。最近の合宿で私は水汲みに行ってばかりだったので、 久しぶりに水汲みから解放された。しかし、水汲みに行った2人がなかなか帰って来ない。心配になって様子を見に行くと、 ちょうど戻ってきているところであった。水が細く、汲むのに時間がかかったとのことだった。水汲みは自分が行くと疲れるし、 ほかの人が行くと心配になる。本当に困ったものである。夕食を食べた後、外に出ると、伊那谷の町がすぐ下に見えた。 北のほうには雷光が見えた。頻繁に光っており、激しい雷雨となっているのだろう。遠いので音は聞こえない。雷を見ながら歯を磨いた。 結局この日は中央アルプスで夕立はなかった。


9月6日 山行3日目

=行程=
5:01 檜尾避難小屋
5:13 檜尾岳
5:46 大滝山
6:50 熊沢岳
8:27 東川岳
8:52 木曽殿越
10:58 空木岳(昼食~12:06)
12:11 駒峰ヒュッテ
13:01 空木平避難小屋

●快適な縦走路

今朝もいい天気である。5時に檜尾避難小屋を出て、昨日下ってきた道を檜尾岳に向かって登り返した。檜尾岳山頂からは朝焼けが美しかった。 ここから熊沢岳あたりにかけてはすばらしい縦走路であった。私は今合宿の中で一番気に入った。森林限界を超えていて景色もよい。 人も少ない。左手には南アルプスや八ヶ岳の山々が見える。よく見ると、南アルプスの奥には富士山が少し頭を出している。 東川岳を過ぎ、木曽殿越に向けて急な斜面を下っていった。木曽殿越付近に小さな人工物が見え、木曽殿山荘だろうかと思ったが、 下りてみるとそれはドラム缶であった。山荘はその手前にあり、斜面に隠れて上からは見えていなかった。


檜尾岳からの朝焼け。

●水が…

小屋から木曽義仲の力水まで往復して水を汲む予定であったが、現在水場はかれていると小屋の前に張り紙がしてあった。 今夜宿泊する予定だった摺鉢窪避難小屋は天水しかないので、宿泊地を空木平避難小屋に変更した。これで時間には余裕ができた。 ここからの登りは長くきつかった。休み休み、ゆっくり登っていった。山頂に近づいてくると、岩場がある。 11時前に空木岳の山頂に着いた。山頂からはすぐ下に駒峰ヒュッテが見える。駒峰ヒュッテの斜面に突き出したデッキが素敵である。 駒峰ヒュッテの右側にはなだらかな台地状の土地が広がっており、その中にぽつんと空木平避難小屋が見える。 山頂でゆっくりとお昼ごはんを食べ、小屋に向かった。小屋までの道はかれた沢沿いで、歩きにくく時間がかかった。 山頂から空木平避難小屋まで休憩抜きで45分ほどかかった。昨年行った先輩から、 登山地図のコースタイムより時間がかかると聞いていたが、その通りであった。空木平避難小屋もきれいな小屋であった。 小屋の前には大きめの石が敷き詰められていて、腰を下ろしてくつろぐのにちょうどよい。到着後はまず水探しに出かけた。 小屋から少し進むと、かれた沢があって橋が架かっている。そこから道を外れてかれた沢に沿って下流に歩いていくと、 すぐ水が流れていた。簡単に水が見つかって安心した。水汲みの後は時間があったので、小屋の前でくつろいで過ごした。 七合目小屋と檜尾避難小屋は携帯電話が通じたが、今日の小屋は地形的に無理であろうと思っていたが、意外にも使えた。 北アルプスに行っている先輩に携帯で写真を撮ってメールに添付して送ったが、残念なことにその日に返信は来なかった。 今日も午後からは雲が広がったが、夕立はなかった。夕食はマーボー春雨。簡単にでき、それなりにおいしい。夕食後は酒を飲んだ。 酒の量が少なく、すぐになくなってしまった。その後トランプをした。夜は少し寒かった。


9月6日 山行4日目

=行程=
5:34 空木平避難小屋
5:47 分岐
8:12 尻無(登山道・遊歩道分岐)
8:45 池山小屋
10:17 林道終点
11:19 登山口(登山道終わり)
11:38 こまくさの湯

●下界へ

今日は行程に余裕があるので、4時に起きて準備をし、5時半に出発した。今日は下るだけだが、大地獄・小地獄と呼ばれる難所もあるので、 気を抜いてはいけない。最後まで安全に下ることが第一である。そう自分に言い聞かせて歩いていく。 小屋からは山腹をトラバースして進み、尾根に出たら尾根に沿って下っていく。樹林帯の中の下りである。 小地獄・大地獄にさしかかったが、最初のほうは整備されていて、それほど危険を感じなかった。 しかし、途中から登山道が崩落しており、それを迂回するルートを通った。迂回路は鎖などが整備されてはいるものの、 慎重な行動が要求される所であった。無事難所を過ぎてしばらく行くと、登山道と遊歩道の分岐に出た。 指導標によると尻無というらしい。遊歩道のほうが歩きやすそうだということで、遊歩道コースを進んだ。 地形図を見ると急斜面を下ることになっているが、斜面を大きくジグザグに何回か折り返すように道が付いており、 遊歩道の名前の通り、確かに歩きやすい道であった。途中、弱い雨がぱらついたが、雨具を着るほどでもなく、すぐに止んだ。 今回の山行で降った雨はこれが最初で最後であった。登山道コースと合流する分岐を曲がって池山小屋に寄ってみた。 この小屋は広くてたいへんきれいである。小屋の前には水が引いてあった。標識によると、 この一帯は「21世紀市民の森林」として駒ヶ根市により整備されているとのこと。休憩した後、分岐へ戻り下った。 「市民の森林」というだけあって、歩きやすい道が続いた。再び斜面を大きくジグザグに折り返しながら下る道となり、 林道の終点に出た。すぐに再び登山道に入り、尾根沿いに下っていく。途中、三本木地蔵を過ぎ、林道を2回横断し下っていくと、 スキー場のゲレンデのようなものが見え、車道に出た。登山は終わった。


※=行程=のところに記した時刻は、到着時刻(出発地等を除く)。--:--は時刻不明。