九州大学ワンダーフォーゲル部【活動レポート】   

2009年富士山

2009/8/25〜27 ○パーティ:みやもと
文:みやもと

部紙「ラグナロク」の中に、’03年に「18切符を用い、3日間で富士山に登って帰った」先輩の記録がある。 調べると、交通費はたった6080円。偉大な先輩の足跡を辿らせていただいた。


8月25日 5:00香椎駅出発。18切符を使いひたすら東進。
23:39御殿場駅着。
26日 0:00行動開始(標高455m)
3:15御殿場口新五合目(1440m) 3:45出発
7:20六合目(2595m) 7:30出発
8:43七合五勺砂走館(3115m) 9:01出発
9:47七合九勺赤岩八合館(3310m) 9:52出発
11:05御殿場口頂上(3710m) 11:15出発
11:40山頂(剣ヶ峰 3776m)
〜お鉢めぐり〜
13:00御殿場口頂上より下山開始
14:20宝永山(2693m) 14:40出発
15:42旧二合目大石茶屋(1550m)
17:00御殿場口新五合目よりバスで下山(1080円)
17:30御殿場駅着→(JR400円)→沼津駅のネットカフェに宿泊
27日 5:01沼津駅出発。18切符を使いひたすら西進、23:30香椎駅着。

8月25日

移動日。できるだけ電車内で睡眠をとるべし。途中下関で、18切符で旅をしているという五十歳近いおじさんに会い、姫路まで同行した。 その人も30年前に富士山に登ったらしく、話に花が咲いた。「出会いは旅の醍醐味だね」おじさんは笑って言った。

26日

日付が変わるのを待ち、御殿場駅より行動開始。富士山スカイラインを徒歩で、御殿場口新五合目を目指す。一時間ほど歩くと青少年交流の家に着く。 ここから街灯は無くなり、たっぷり二時間暗闇の中を歩く。ライトは必携だ。


23:50
闇に伸びるスカイライン。わずかな傾斜の先には富士山が待っているはず。同時に、傾斜の小ささが新五合目までの距離を物語っている。

1:41
自衛隊の訓練場があちこちにある。独り夜の山道を行くのは恐ろしい。自然と足が速まった。

小雨が降る中、新五合目到着。登山道を少し進むと大石茶屋に着く。茶屋の左手に登山道が続いている。 御殿場口は火山礫でできた広大な富士砂漠を延々2000m登るルートである。 登る際、ザクザクした礫に足が沈み非常に体力を消耗する。日が昇るまでは霧も出ており、視界不良だった。


6:03朝日。気がつくと後方に雲海が広がっていた。頂上でなくとも美しい。

6:29霧が晴れると富士砂漠が姿を現す。奥に山頂が見えるが、まだ登頂には五時間近くかかる。

それにしても富士砂漠、登れども登れども景色が変わらない。山の大きさを実感する。 しかも登り始めた時間が特殊なため、他の登山者に遭うこともない。独りで砂漠を歩いていると、夢の中にいるような錯覚を覚える。
七合目に至り、ようやく人がいる小屋に着いた。一休みをし、頂上までもうひと踏ん張りだ。

9:01七合目砂走館。トイレ一回200円。

9:48

9:48
赤岩八合館とメニュー。山物価だが、なんと右上に「カレーお代わり自由」の文字が! 小屋の人は親切で、何かの民族楽器をポコポコ叩いていた。一日中そうしてのんびりしているらしい。

九合目付近でようやく礫地帯は終わり、地面は赤い火山岩になる。 ここまで来ると空気が薄く、少しペースを上げただけで心臓の鼓動が速くなる。傾斜の増した斜面を登り、最後の鳥居をくぐれば頂上だ。
頂上に着くと大勢人がおり、急に観光地らしくなる。登頂後左手に進めば剣ヶ峰(3776m)がある。 だがてっぺんには観測所が立っているため、あまり風情があるとは言えない(剣ヶ峰に作る必要があったのか?)。 観測所の脇に小さな展望台があり、そこから南西方向を一望できる。この日は360度雲海が広がっていた。


11:51雲海をパノラマで。どこまでも見渡せる空に雲の水平線がのびる。眺めに圧倒された外人二人組が”Holly shit!”とつぶやいた。 まねして「ホーリーシット」と言うと、カメラを渡されシャッターを頼まれた。

12:29山頂の人だかり。あまり落ち着ける雰囲気ではない。

12:33火口。奥に白く見えるのは氷である。

地面がサクサクしているため、登りに比べ下山はスムーズにいく。特に七合目からの「大砂走り」と呼ばれる下山道は砂礫がクッションになるため、 全力で駆け下りても全然膝を痛めない。むしろ砂礫に足が沈みこむ感覚が気持ちいい。途中、宝永山で休んだ後は大石茶屋まで一時間で駆け下りた。

14:27
宝永山頂より富士山頂を望む。あの頂からここまでわずか80分である。

[感想]
睡眠不足で一気に3000m登る今回の行程は、正直半端じゃなくきついです。部誌に書いてある通り、お勧めはできません。 特に駅から新五合目までは、時間的にバスがなくてもタクシーを使う方がいいでしょう。ずっと一人で肝試しをしている気分でした。 また、登山口から延々続く富士砂漠には肉体的にも追い詰められ、さらにその現実離れした風景と圧倒的な解放感は睡眠不足とあいまって 確実に心を狂わせてくれます。苦しさを、楽しさを超えた山特有の感情を味わわせてくれます。
今回の旅は先人の足跡をもとに実現しました。参考になる記録を残してくれた茅島先輩に、この場を借りてお礼申し上げます。